太陽とアイスとブリザード
「暑いね」
「そうだな」
「ねえ、アイス買ってきてよ」
「やだよ。暑いし」
うだるような熱が道路上でゆらゆらと揺れる。
「……何をしているのかな?」
溶ける、と言わんばかりにへばっていた二人は、目の前に立った人物の声に冷気を感じて文字通り飛び起きた。
視界に入った姿はきっちりとスーツを着て眼鏡をかけた黒髪の男。
赤銅色の髪をした青年は見ただけで暑い、といわんばかりに顔を顰めた。
「うへ……アンタ、暑くねぇの?」
「暑いけど、今は仕事中でしょ」
「冗談じゃねぇよ。こんな暑さで真面目に服着てたらそのうち倒れちまう」
横にいた金髪の青年ももっともだと言うように頷く。
「その様子じゃターゲットを見逃したことにも気付いてないでしょ」
「えッ!」
凍てつくような声音の正体を一瞬で悟って二人は震え上がる。
「こっちで処理したから問題ないよ。いつまでもそこで日に焼かれていたいなら止めないけど」
「うわっ……ちょっ! 待って!! 悪かったから!」
「何が?」
冷気どころかブリザートだ。
暑いはずの周囲に、雪の嵐が見えるなんて幻覚に違いない。
ふるふる、と勢いよく首を振った青年はとたんに頭の中身も回転したようで、よろよろとブリザードの元凶に突っ込んだ。
「まったく……水分くらいとりなよ」
こんな炎天下に居たら脱水症状になることくらい分からないのかと告げられるも、反論するような元気も無い。
今意識を飛ばしたら置き去りにされて日干しかな、などと失礼なことを考えながら青年の意識は闇に落ちていった。
夏の間の拍手お礼でした。
……の割には秋くらいまで居座ってたりとか。そのへんはご愛嬌ということでひとつ。
刀を怒らせたら怖いと思います。うん。
2008/10/20 【BCFF7】