おひるね
あたたかい。
意識が覚醒していくにつれて、自然と浮かんできたのはそんな言葉。
鼻腔をくすぐるのは、柔らかな草のにおいと、土のにおい。
目を閉じていても、強い光が当たっていることが分かって。
まだはっきりと覚醒していない少女は、ふわふわとした感覚を楽しむように瞳を隠したままゆっくりと息をしながらぼんやりとした記憶を辿る。
「ティナ?」
何してるっスか?
独特の口調で話しかけてきた声に、ティナと呼ばれた少女はふふ、と笑う。
目元にそっと影が落ちて、少しだけ眩しさが和らぐ。
ゆるく開かれた少女の瞳は、好奇心に揺らめく海色の瞳と合った。
そっと触れるのは今の日差しと同じくらい眩しい太陽の匂い。
「ティーダ」
ふわり。
微笑んでティナが応えれば、海の色が細められる。
見た目や行動からすれば意外だが、他人の様子をよく見ている彼は、声の調子だけで何となく分かったのだろう。
そっか、と零しただけでそれ以上問いを重ねるようなことはせず、ティナの傍に転がった。
突然の眩しさに、ティナは思わず瞳を閉じて苦笑する。
ごめん、と。短い謝罪には首を振ることで応えて、彼女はティーダが投げ出した指先に触れる。
どうしたと問うこともなく、彼は少女の好きにさせた。
剣とボールを扱うてのひらは固く、どこか子供っぽい感じの彼には不釣り合い。
だがティナは彼が本当に口先だけのエースでは無いことを知っている。
不釣り合いに見える手は、彼自身の実力と努力の証。
「気持ちいいっスね−」
「うん」
ほとんど開いていられないくらいの眩しさの中で、二人は寝転がって空を見上げたまま笑う。
ゆっくりと。
流れていく雲と、強い日差し。
それがひとときの幻だと分かっていても二人はその場で笑い合った。
2011/09/30 【DFF】