忘却の御手

薄暗がりの路地。
吹き抜けていくのは時期に似合わぬ生暖かい、風。
微かに血と、何かが焦げたような匂い。
這いつくばった土の湿った匂い。
そんななかに一人。転がっていた。
意識は重く霞掛かり、まともに思考する気力を奪われていく。
「無様だな、と」
声がした。聞いたことのない声。独特なその口調は十分虚ろな意識に働きかけてくる。
無理にまぶたを押し上げれば、焦点のあわない視界に赤と黒の色彩が映った。
空を覆う厚い大地。
ああ、そうだ。ここは
色を失った、世界。
「ころしに……きたのか……」
切れ切れに声を絞り出せば楽しそうな笑いが降ってきた。
「まさか。なんでそんな面倒なことしなきゃならないんだ、と」
ただこの通りを利用したいだけだと告げられてもついさっきまで死線ぎりぎりのところにいた頭は納得しない。
口を開くのも億劫なのに、相手も必要なこと以外喋らない。
「通るだけなら、さっさと行けばいいだろう」
辛くなって、まぶたをおとす。
「邪魔だぞ、と」
「踏んでいけばいい」
次の瞬間、物凄く嫌そうに拒否してきた相手に少し驚く。
それでも朧ながら意識を保てたのはそこまでで、呆れた調子で呟かれた声も遠くなった。

+++

思い出というほどいいものじゃないが、それでも忘れていた過去の出来事を思い出すのは血と、汚臭の所為か。
それとも前方で電磁ロッドを振るう彼の傍から漂う焦げた匂いか。
「いいかげんしつこい……ぞ、っと」
鈍い音がして、再びあたりに異臭が漂う。
過去に虚ろな意識で目にした赤は、今は近く。
声をかければ応える距離。
その間に横から影が割り込む。
発砲するには距離が近すぎる。一瞬で判断して、相手の側頭部に銃底を叩き込んだ。
バランスを崩したところにもう一方の銃で弾丸を送り込む。
残響に重なるように、ぴうっ、と場違いな音がした。
「シリル、接近戦もいけるんじゃないか?」
「レノさん……わざとか?」
前方で楽しそうに笑う姿に疑問が頭をもたげる。
「まさか。そんなへまはしないぞ、と」
声と共に向いた目が右手。
丁度その路地から敵が顔を出したのが分かった。
「一緒に突っ込むか?」
「遠慮する」
誘う言葉はかけられたものの本気ではないらしくすぐに駆け出すレノを追って、シリルは銃口を上げた。
俺まで突っ込んでいったら誰が援護するんだ?
かみ殺すように思考の端で問いかけて、引鉄をひく。
一発は腹部。
もう一発は別の敵の足。
レノを避けるようにうちこめば、間をおかず両方彼がとどめをさした。
「これで全部か……?」
「そのようだな、と」
軽い音と共に手にしたロッドを振って、レノが答える。
倒れた敵が立ち上がらないのを確認して、にやりと笑った。
「帰るぞ、と」
「……ああ」
肩を軽く叩かれて、見下ろしていたものから視線を外す。
「なんだ。昔でも思い出したか、と」
促すように押されて、しかし聞こえてきた言葉に驚く。
「レノさん覚えて……?」
呆然とした問いには悪戯が成功した子供のような笑顔。
やられた。
自分は覚えていなかったのだから文句を言うことも出来ない。
鈍いぞと言われれば頷くしかない。
苦笑して、歩き出したレノに続いた。

ニチョレノなのかレノニチョなのか...... この二人の場合デフォでリバかと。 いや、それを言ったら二丁は全般的にリバOKそうだ。 二丁はさりげなくレノと会ってるといい。 レノはボロボロの二丁をさっくり見捨てて(笑)去るといい。 でもきっとケアルくらいはかけてくれるよ。 という元に制作された妄想話。

2006/01/29 【BCFF7】