探し物

「そこ、全部まとめてこっちよこせ」
「全部?」
「うわ……っと。だからって投げるな! あぶねえな」
「ごめんなさい!」
会話しているのは、サングラスをかけて葉巻を噛んだ背の高い男と、ふわふわの巻き毛に青の目をした優男然とした青年。
二人の出で立ちと雰囲気は彼らが居る部屋と全く合っていなかった。
男はどこか苛ついているようで、しきりに火のついていない葉巻を気にしている。対して巻き毛の青年は至極楽しそうに見えた。
がしゃん。
突然派手な音が響いて部屋の中心にあった玩具の塔が崩れる。
細かいブロックで出来ていたそれは、半ばでぽきりと折れ、破片は部屋中に散らばってしまっていた。
「ボクじゃないよ!?」
「そんなの見りゃわかる……なんだ?」
クエッ。
小さな声。恐る恐る壊れた塔の中を覗くと、小さな生き物が笑っていた。
「こんな所にいたのか」
ひょい、とつまみ出されたのはまだ柔らかい産毛に包まれたチョコボの子。
「何で今まで見つからなかったんだろ?」
「さあなあ……大方寝てたとかじゃねーのか?」
壊れてしまった塔はどうしようもない。取り敢えずブロックを集めようと二人が屈めば、チョコボの子が男の腕から逃れた。
壊れかけの塔に突撃しそうなのをかろうじて青年の腕がすくい上げる
「危なかった……」
「悪い」
ばつが悪そうに髪の毛をかき回した男に、青年は大丈夫だと笑いかけて腕の中のチョコボを差し出した。
「ちょっとこの子あやしてて。そして主任に連絡とってくれる?」
「お前はどうするんだ?」
「これ、直すよ。大丈夫。形覚えてるし、こういうの得意だから」
コレも預かって。
気軽にいつも首から提げている武器も渡されて男が慌てる。
真剣な顔で飛び散った欠片を集めて組み立て始めた青年を横目に遊びたくて暴れるチョコボの子を宥めながら携帯電話を取り出す。
「おっさんか? ああ。こっちは見つけたぜ……分かった」
まさかこんなことになるとは思わなかった。たしかに。
そんな周りより年を食ったもの同士の気安い会話。
電話を切る頃にはすっかり元通りになった玩具の塔と、得意げな青年が男を見ていた。
チョコボの毛と同じように髪の毛をかき回してやって、凄いなと声を掛けてやる。
少しだけ拗ねた表情を見せたが、気を取り直すように伸びをした。
「主任達のほうはどうだって?」
「ああ。向こうもそろそろけりがつきそうだということだ。こっちも目的は達したんだし、戻るぞ」
ぷらん、と首の後ろをつかまれて吊るされたチョコボの子は自分の身に何が起こったのか把握できていないかのように首を捻ってクエッと鳴いた。
「もうちょっと丁寧に扱ったほうがいいよ」
「へいへい」
仕方なくかかえるように腕に抱いた男が部屋を出て何も無い廊下を歩き始める。後に続いた青年は、でも……と言葉を続けて笑った。
「なんか、そうやってるとパパさんみたいだね」
悪意は無いのだろう。だがそれだけに破壊力抜群だったそれは男を直撃し、撃沈させるに十分だった。
撃沈した男の腕から逃げ出したチョコボの子を再び青年の腕が掬い上げる。
「別に誰のとか言ってないのに」
「あってたまるか!!」
他に人も居ない廊下で、男の悲痛な叫びを聞き届けた者は誰も居なかった。

レジェヌン……というかレジェンド&ヌンチャク 最近そんなのばっかりだな。 とりあえず、ずっこけるレジェンドが書きたかったんだ。 それだけなんだ。ごめんレジェンド。

2008/08/08 【BCFF7】