「雨、だな」
「そうだね」
「見れば分かるだろう」
「そういえばこっち来てから初めてッスよね」
あ、と。
最後に口を開いたティーダの言葉で気付いたのか、一度冷淡な反応をした面々はあらためて天を見上げた。
雨自体はめずらしくもなんともない。元の世界にも、日常的にあったもの。
だから失念していたのだ。
この世界によばれてから、目にしていなかったことに。
「まったく気にしていなかったな」
フリオニールが呟いて、セシルが穏やかにそれに同意する。
クラウドも無言ではあったが二人の言葉に頷いて、最初にそれを指摘したティーダを見遣った。
「この世界でも、ちゃんと雨は降るんだな」
つぎはぎだらけの世界でも、自然現象は当たり前に存在するのだと。口にしたティーダも、その他の面々も天を見上げる。
周りに雨宿りできる場所などは無くて、たちまち全員がずぶ濡れになった。
それでも、彼らの表情は明るい。
「この領域を抜けたら止むかな」
「その可能性は高いだろうな」
セシルの呟きに、天を向いていたままのクラウドが答えて、つられるようにティーダとフリオニールも口を開く。
「ちょっともったいない気もするッスけどね」
「だからといって雨の中で寝るわけにもいかないだろう」
それはそうだと全員が頷いて、歩き出そうと踵を返す。
「あ!」
瞬間、複数の声が重なった。
「虹……か」
うっすらとではあるが、確かに空に架かる色に少しだけ見入って、フリオニールは苦笑を落とした。
「何もしなくても晴れそうだな」
「確かに」
同じように苦笑を落とした彼らは、誰が言い出した訳でもなくその場に留まって、濃くなっていく光を見詰めた。

ずいぶんと長いこと拍手お礼だった24710組。ほのぼのしくて好きですこいつら。

2010/03/13 【DFF】