睡魔を灯す温もり

ひどい嵐だった。
気候性のものではなく、世界の終わりの嵐。
崩れていく世界に応じて変化していく気温はすでに息が白くなるほどにまで下がっている。
ただでさえあたりに熱を持つものが無い荒野の夜は冷えていた。
張られたいくつかの天幕のひとつ。
毛布に包まったままもぞもぞと身動きしたバッツに気付いて見張りから戻ったティーダは首を傾げた。
「バッツ、寝てなかったッスか?」
「んー……ティーダ?」
「そーだよ」
今日の見張りの最初はバッツとセシル。次がティーダとクラウド。そして次のジタンとスコールと交代して、戻ったところだった。
今頃クラウドもスコールと交代にフリオニールの天幕に入っている頃だろう。
バッツの横にはきちんと整えられた毛布。
まだ温もりを残しているそれを捲って、ティーダはすとんとバッツの隣に腰を下ろした。
「寒くなったから目、冷めちゃったんだよ」
「寒いの?」
「さっきまでくっつくようにしてジタンが寝てたからさー」
バッツの言葉に納得したティーダは、じゃあオレがかわりになってやるよと笑う。
交代制の見張りは、次の見張りの天幕で入れ替わるようにして眠ることになっている。
そうして入れ替わった結果、バッツは先ほどまでジタンと眠っていて、さらにジタンと交代したティーダが来ることになった。
起きているのなら話は早いとばかりに堂々と寝る準備をして毛布に包まる。
そのあとで、まだもぞもぞしている男の名を呼んだ。
隣の毛布にするりと腕を忍ばせて背中から抱きしめる。
「ティーダもジタンと同じであったけーなー」
「そういうバッツは随分と冷たいんだな」
冷えた体に腕を回しながら、ティーダは感想を落とす。
実際、バッツの体がとりわけ冷えているというわけではなく、単純にジタンやティーダの体温が高いのだろう。
ぴたりと背中に張り付けば、バッツも笑った。
「あったけー……」
「あ、なんか今バカにしただろ」
高い体温は子供のもの。敏感に感じ取ったティーダはむくれるが、バッツは気にすること無く足を絡める。
「うわ……! ちょっと!!」
「なんだよー。あっためてくれるんだろ?」
今から朝までは短い時間とはいえ、敵襲が無い限り起こされる心配は無い。
分かっているからこその行動に、ティーダも負けて溜め息を落とした。
「なー。バッツ」
「んー……」
問いには眠そうな生返事。
「オレ、邪魔じゃないか?」
背に押しあてられた額と、零された呟きが耳朶に触れるのが同時。
「なんでそう思うんだ?」
「いや……寝にくくないかな、って」
装備を解いている二人の肌は近い。くすくす、と。バッツが笑った。
「へーき。あったかいよ?」
うん、と。ティーダは頷いてそっと笑った。細かい振動が触れた肌からバッツに伝わる。
「じゃあ、おやすみ?」
「うん、おやすみ」
疑問系のティーダの言葉に、笑ったバッツが答えて。
二人はお互いの体温に添わせた睡魔に身をゆだねた。

はい、バツティダです。ティダバツに見えなくもないですがバツティダです。だって今日は5/10だから(待て) ティーダとかジタンとかはお子様体温だったら可愛いなーと思います。

2010/05/10 【DFF】