幻の神殿

 そこは熱風吹き付ける空間だった。
 肌に叩きつけられるのは優しさなど欠片もない砂塵纏う空気。
 ああ、と。一人立ち尽くした男は息を零す。
 ゆるく瞳を隠せば瞼の裏で強く残像の光が瞬いた。
 翻るマントの裾、その先端に付けられた金属片が主人の代わりに高らかに声を上げ、舞う度に反射する光は周囲に沈んだ異形のものを笑う。
 つまらん。
 投げやりな声が落ちた。
 それが終わりの合図だったとでも言うように周囲からは一瞬で色が消え、けぶる空は無機質な天井に、踏み込めばさくりと崩れたはずの砂の地面はどこまでも平坦で冷たい床に姿を変えた。
「王様、どうだった?」
 満面の笑顔で駆け寄るのは、男をこの場に呼び出し、繫ぎ止めた、世界最後のマスター。
 そう、直前まで感じていた天も、地も、すべては偽物。
 シュミレーションルームという場所で、あらゆる場面を想定して対応するためにプログラムされ、構築された幻。
 それでも、その幻が見せる効果は、たいそう興味深い。
 ふむ、と。わずかに思案する間にも、彼のマスターはシュミレーション設定用の端末に足を向けている。
 ほぼ無意識に表情を和らげた男は、同じように端末の前に立った。
「王様?」
「敵はともかく、空間の再現には興味を惹かれるものがある。許す。余に説明するがよい」
「あ……うん。ええと、わかる範囲でいいなら」
 男を見上げたまま惚けていたマスターは、言葉をきっかけに端末の画面に視線を戻す。
 わかる範囲で、と先に告げた通り説明は辿々しい。それでもそれをよしとした太陽王は、気分良く頷いた。
 世界の設定。環境の設定。曖昧な場合、検索をかければ豊富なデータベースの中から該当のものが導き出される。
「先輩、こちらでしたか!」
「あ、マシュ! どうしたの?」
 軽く駆けてきた少女を相手に、マスターがへにゃりと表情を崩す。
 側にいた男のほうにも一度頭を下げてから、目的の相手に向き直った彼女は、ドクターから呼び出しです、と要件を告げる。
「あー……でも……」
 ちらり、視線が男に流れる。
「よい。必要があることなのだろう。ならば疾く向かうが良い。必要なことは聞いた。余を気にする必要はない」
「ありがとう、王様!」
 すぐに戻ってくるからと告げ、出て行く二人を見送り。
 一人残った男は笑みを履いた。
 
 マスターが戻ってきた時に目をしたのは、わーこれテレビで見たことあるーとでも言って呆然とするしかない巨大な建築群。
 そして、そんな中。機嫌の良いファラオの声が響いた。

今年の正月に推しがほぼバラバラな友人同士で集まった時にどうせなら書き初めしようぜ!って話になり、全員1キャラずつ指定してアミダで決定。指定されたキャラを書き(描き)合うっていうことをやったんですが、その時は筆記用具持ってなかった上に時間がなかったので仲良く全員宿題に。 引いたお題は「オジマンディアス」

2018/01/08 【FGO】